MC HAMMER





Goin'Up Yonder

以前ラップやヒップホップの世界にも「哀」があるという投稿をしたが、
ではバブル絶頂期のチャラいイメージが全てのように見えるハマーの場合はどうだろう?

実は彼もまた例外ではない。
ハマーは子供の頃から敬虔なクリスチャンでもあり、
少なくともメジャーで出したアルバムには必ず一曲、
ゴスペルを下敷きにした曲が入っていた。
大ヒットした「PLAY」がそうだし、転落の第一歩となった「ハマーIII」の
クライマックスに配置されていた「DO NOT PASS ME BY」での、
タマライン・ホーキンスをゲストに迎えての大盛り上がり大会は必聴の出来だった。

それから数年、一時はマイケルを抜くといわれたハマー帝国は落日の途にあった。
レーベルを移籍して出したアルバムの出来は良かったが、
ギャングスタ・スタイルを打ち出してイメチェンを図ったことが完全に裏目に出てしまった。
加えて親友イージー・Eがエイズに倒れ、かつて脇を固めていたクルーは
雲の子を散らすように去っていった。

そんな中ひっそりとリリースされた虚心坦懐のアルバムが「インサイド・アウト」だ。

断言しよう。本作こそがハマーの最高傑作アルバムである。
「U Can't touch this」のきらびやかなハマーは、そこにはもういない。
いるのは、クリスチャン・ラップの世界でデビューを画策されていたころの、
実に内省的な一人のラッパーである。
随所にスポークン・ワード(説法)を進むアルバムは、
当然のようにあるスタイルに向けて登りつめていく。

それが「Goin' up yonder」だ。

ワイナンス家と並ぶゴスペル界の名門であるホーキンス家と
ハマーはつながりがあるようだ。
この曲もホーキンス家の一人、ウォルター・ホーキンスの大ヒット曲であり、
大概の人は知っている。
そこにハマーがラップを乗せ、それに先導されて新たに発掘した10代のシンガーを
リーダーに立てたクワイアが聞き手を登りつめさせていく。
ポップに仕立てられた「Do not…」とは明らかに手触りが違う。
「本気」なのだ。
僕は何の疑いもなく真宗大谷派だが、この曲に何度涙腺を揺さぶられたかわからない。
そしてこの曲に続く「Thing keeps doing」ではそれまでより
少し高いところにいる自分に気づくのである。空中継挙だ(違)!!

しかし、これがハマーの最後のメジャー・リリースとなった。
翌年ハマーは巨額の負債を抱えて破産。
その後は例によって芸能ゴシップの歴史になっている。
しかし、その隙間にこんな作品があったことは歴史の闇にうち捨てられたままなのである…。
                               (2008/6/3) <fxhud402>  


Inside Out (1995)




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