LYLE LOVETT





Pontiac

なまくらに日が照り付ける、けだるい午後。

おもむろに停めた車越しに老人は街の女に目をやり、両手越しに過去と戯れる。
かつて12人ものドイツ兵の命を奪った手。
しかしそれも浮かんでは消える幻でしかない。

視線はうつろに宙を泳ぐ。
日がかたぶくにつれ、世界が、すべてが、なにもかもが、
降り積もる真っ暗な虚無の底へ、沈み込んでゆく....。

ほんの二分台の曲、力なく喘ぐ、ため息のような歌の他には
ごく最小限のバックしかない、そんな音が、
聴き手を知らず知らずのうちにニヒリズムの砂地獄の餌食にする。
その手際は実に鮮やか、お見事である。
そしてこのような凄まじい才能と日本人との接点が、
「ジュリア・ロバーツの元旦那」というゴシップただ一つ
....これもまた虚無である。   <fxhud402>


Pontiac (1990)


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