KLAUS NOMI





Death

皆さんはクラウス・ノミを知っていますか?

「キューピーちゃんみたいな頭の人だよね」
「あぁ、あのジャケットの顔が怖い...」
「ホモだったんでしょ?んでエイズで死んだ...」
「石橋楽器のポスターに出てた人でしょ」

ん、どれも正解。でもみんな大切なことを忘れてる。
それはクラウス・ノミはまぎれもなく音楽家だったってこと。

森永卓郎が「それをやめれば楽になる」と言うぐらい、
多かれ少なかれ人はその一生の中で「自分探し」を続けている。
ましてやアーティストともなれば、それは人生のすべてだといってもいい。

クラウス・ノミは世間に知られるようになる前、
地元ドイツの歌劇団でオペラ歌手として過ごしていた。
もちろん歌だけじゃなくて芝居もダンスもお手のもの。
そんな仕事をしていたくらいだから、小さいころからクラシックにどっぷり漬かって
育ってきたんだけど、実は子供のころにあのメリケンのロックの酋長、
エルヴィス・プレスリーに魂を撃たれてしまったんだ。
こっそり買ってきた「監獄ロック」や「ドントまずいぜ」を親に見つかって大目玉、
マリア・カラスに交換される...なんてことはしょっちゅうだったらしい。

そんな過去のトラウマがそうさせたのか、
一生オペラ団員で終わりたくないと思ったのか。
いや、オペラ歌手では納まりきらない自分の居場所を見つけるために、
ノミ氏は30歳にして歌劇団を辞め、イギリスに渡ります。
そして、もうひとつの特技であるパティシェ(かなり腕が良かったらしい)で
生計を立てながら路上でパフォーマンスを続けるうち、
こういうのが大好きなスターマン、ディヴィッド・ボウイに見出され、
バンドを組んでニューヨークに進出、サタディ・ナイト・ライヴで人気者に。
それから先のことは歴史になっている。

最初に書いたようにアーティストにとって
「表現するべき自分」を求めていくことは人生のテーマだ。
多くの人がそれを形にできることなく終わる中、
彼はその短い生涯の中で間違いなくその一端をつかんだと思う。
どうしてそれを責めることが出来るだろう?
たまたまそれがオペラとエルヴィス、
そしてそれらに劣らず好きだったというSF小説といった、
一般人には「まぜるな危険」としか映らない要素のフュージョンだったとしても。
その裏には「自分は同性愛者であり、もう"普通の人"にはなれない」という
絶望が渦巻き、それがアートへの切実な思い、音楽に身を投じることの
喜びとして現れていたのだから...。

そして、それを最初のアルバムの時点で立派に形にしているのだから、
やはりその実力は本物だったのだ。
スネークマン・ショーでおなじみの"COLD SONG"にもそれは顕著だが、
他の曲にもぜひ耳を通して頂きたい。
そしていっそうジャケットの顔が怖い2nd"SIMPLE MAN"のクライマックスを飾る"DEATH"。
すでに自らの運命を悟った男の放つ言葉「Remember me...。」に宿る本物のデカダンスに、
あなたも魂を撃たれるはずだ。
かつて彼自身がエルヴィスによって体験したように。

その上で、もう一度お聞きしたいと思う。

「クラウス・ノミを知っていますか?」   



  追記:
こんなユニークな人間の生涯をハリウッドが見逃すわけがなく、
この度彼の伝記映画が製作された。
といってもレイ・チャールズのように役者が彼を演じるのではなく、
生前の映像を交えながら彼を知る人が思い出を語るドキュメンタリーのようだ。
公式ページのニュースのコーナーでトレイラー(予告編)を見ることができるのだが、
我々のノミ観を覆す映像の数々に衝撃を受けること請け合いである。
この際はっきり言おう。
あの格好と表情で決めてさえいなければ、
ノミ氏はかなりの美形、二枚目である。
惚れちゃあいけないよ、ってなもんだ(^_^;)。
それを抜きにしても自らの世界を極め、
貫き通した人間の格好良さに痺れるはずだ。
初夏には東京でも公開されるらしいので、
その頃にはマスコミでも話題になるかもしれない。  <fxhud402>


Simple Man (1982)



Klaus Nomi Official HP






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