Let's Be Alone
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誰しも「冒険してみたい頃」というのがある。 長年の努力から実力と自信を身につけ、 もっと自分のやりたいようにやってみたくなる時が。 そして往々にしてそういう人にはそんな気持ちを見越した人が擦り寄ってくるものなのだ。 シャルロット・チャーチはクラシックの聖歌を歌う天才少女歌手として、 本国イギリスを始め世界中で高い人気を得てきた。 特にキリスト教国ではない日本でも「癒し」のキーワードと共に その地位を盤石なものとしていた。 しかし、幼いうちにクラシックの厳格な世界から 華やかな芸能界に移って生きてきたことは彼女の精神性に大きな影響を与え、 イギリスでは次第にシャルロット・チャーチは芸能タブロイド紙の常連タレントとなっていった。 その清楚なイメージと裏腹な夜の暴れっぷりは、 彼等の絶好のネタとなったのである。 しまいには酒豪で知られるオエィシスのリアム・ギャラガーに、 「酒に関しちゃ俺の後継者だ」と言われる始末。 もはや聖少女シャルロットのイメージは木っ端微塵。 しかし彼女はそれを笑い飛ばし、機は熟したとかねてから温めていた計画を実行に移す。 ポップ・シンガーへの転身である。 2005年6月、胸もあらわにジャケットで一輪の花を加えて横たわる、 シャルロット・チャーチのポップ・アルバム"Tissues&issues"は店頭に並んだ。 しかし、その結果は英国民はかつての彼女を忘れたわけではなく、 今も変わらず愛していることを証明するものだった。 そして日本のレコード会社も「癒しの歌姫」のイメージを守ることを選び、 本作の日本盤はリリースされていない。 しかし、考えてもみてほしい。 シャルロット・チャーチと言う名前自体、日本語に直訳してみればモーニング娘。や 一発太郎の如く直戴なものなのだ。 「癒しの芸術」でもなんでもない。 「芸能」そのものではないか。オセロ松嶋のように。 とはいえ、確かにこのアルバムに対する酷評は仕方のないものだとは思う。 アルバムの内容に、彼女の良さがまったく生かされていない、と言うのであれば。 しかし、けしてそうではないのだ。 確かにシングル・カットされた曲はブリトニー・スピアーズかと思うようなR&Bや、 ホーン・セクションが唸りをあげるロックだったりする。 しかし、むしろこのアルバムの本質はそれ以外の曲...... つまり、彼女の持つクラシックの深い素養を生かした端正なポップスにあるのだ。 3枚目のシングルとしてホリディ・シーズンにリリースされた "Even God(Can't change the past)"や、 ファースト・シングルのカップリング曲である"Unfaithful"に 我々聞き手は改めて居住まいを正すべきであろう。 そして各曲のタイトルからも察してもらえるだろうが、 自身の手になる歌詞からはなんとも言えない痛みや蹉跌が漂ってくるのだ。 とてつもないクオリティの、とてつもない哀しみを纏ったアルバムである。 その中から今回は"Let's be alone"という曲を選んだ。 イントロから朗々としたソプラノの詠唱で始まるこの曲は、 ハード・ロック界隈のリスナーが言うところの「様式美」の構成を持っている。 もちろんディストーションの効いたギターなんて一切入っていないのだが。 それだけにデス/ゴシック・メタル系のバンドと合体なんてことになれば 、かのエヴァネッセンス以来のカリスマが誕生することになるだろう。 多分、そうはならないだろうが...。 <fxhud402> |
Tissues and Issues(2005) |
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